今回は血液検査(血球)についてざっくり説明します。
----目次----
- 血液の性状
- 赤血球の造血と破壊
- ヘモグロビン
- 鉄
- 赤血球
- 網赤血球
- 白血球
- 血小板
🍎血液の性状
▶血液量
・血液量:体重の約8%
・循環血液量=循環血球量+循環血漿量
測定:エバンス青
・体ヘマトクリット(循環赤血球量/循環血液量)
通常の血液検査で検査される値は、静脈ヘマトクリット>体ヘマトクリットとなります。
▶全血比重
・測定:硫酸銅溶液
・Hb量と正相関あり
遠心分離した時に赤血球(Hb)が下に沈むイメージ
・多血症で高値
・基準値:🚹1.055~1.063 🚺1.052~1.060
▶粘度
・血液粘度はヘマトクリット値と正相関あり
・血漿粘度は蛋白と正相関
・全血粘度の基準値:3.5~4.5(4.0±0.5)
🍎赤血球の造血と崩壊
▶造血因子
造血因子 | 産生細胞 | 刺激する血球 |
エリスロポエチン(EPO) | 腎細胞 | 赤血球 |
トロンボポエチン(TPO) | 肝細胞 | 巨核球、血小板 |
コロニー刺激因子 顆粒球コロニー刺激因子 (G-CFS) 顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CFS) 単球マクロファージコロニー刺激因子 (M-CFS) | マクロファージ、間質細胞 T細胞、マクロファージ、間質細胞 マクロファージ、間質細胞 | 好中球 好中球、好酸球、単球 単球、マクロファージ |
インターロイキン IL-2 IL-3 IL-4 IL-5 IL-6 | T細胞 T細胞 T細胞 T細胞 T細胞 | T細胞、B細胞 造血幹細胞など 肥満細胞 好酸球 巨核球、形質細胞 |
▶造血器官
骨髄 | 赤色髄:細胞髄 黄色髄:脂肪髄 ※加齢とともに黄色髄が多くなる |
リンパ組織 | B細胞が多い |
脾臓 | 赤脾髄:血液が豊富 → マクロファージが存在し、細菌や異物の処理、 老朽化した赤血球の貪食 白脾髄:灰白色にみえる → リンパ組織 |
胸腺 | 加齢とともに萎縮する。 もともとの役割はT細胞の成熟 |
髄外造血 | 末梢血中に幼若白血球や赤芽球が出現 (骨髄類洞のようなフィルターがない) ◎骨髄化生 → 骨髄線維症、骨髄癌腺腫 |
▶血球の個体発生
・胎児初期は卵黄嚢(血島)で赤芽球が作られる
・造血の順番:卵黄嚢→肝・脾→骨髄
・造血のピーク:肝・脾は胎生4~5か月。骨髄は出生時(10か月)
・成人:頭蓋骨、椎骨、胸骨、肋骨、腸骨など体幹の扁平骨と上腕骨や大腿骨の近位部
🍎ヘモグロビン
成人ヘモグロビン | グロブリン構成 | 割合(成人) |
A | α2β2 | 97 |
A2 | α2δ2 | 2 |
F アルカリ抵抗性が強い | α2γ2 | 1 ※出生時は55~95%を占める |
▶ヘモグロビンの合成
赤芽球の細胞質内で合成される
・ヘム:ミトコンドリア
・グロビン:リボソーム
ヘモグロビンは以下の4種類があります。
種類 | |
還元型ヘモグロビン | 酸素と結合していない |
酸化型ヘモグロビン | 酸素と結合している |
カルバミノヘモグロビン | 二酸化炭素と結合している |
メトヘモグロビン | ヘモグロビンについている鉄が2価鉄から3価鉄になり酸素が結合できなくなっている |
🍎鉄
・成人の体内総鉄量:約3~4g
・吸収と排泄:1mg
※吸収は十二指腸(小腸上部)で2価鉄として!
ビタミンB12の吸収は回腸(小腸下部)、葉酸は空腸で吸収
・体内の鉄成分
約70%:ヘモグロビン鉄
約25%:貯蔵鉄(フェリチン、ヘモジデリン)
その他:ミオグロビン鉄、含鉄酵素(チトクローム、カタラーゼ、PODなど)
ヘプシジン(ペプチドホルモン)
・肝実質細胞で産生
・抗菌活性をもつ
・Feの吸収と再利用を調整している
⇩
Fe過剰 ⇒ ヘプシジン↑↑ ⇒ 腸管からのFe吸収抑制
炎症時 ⇒ IL-6などの炎症性サイトカインによりヘプシジン↑↑
🍎赤血球
・形態
・1個の前赤芽球から8~16個の成熟赤芽球ができる
・EPOはCFU-Cにメインで作用して分化させる
・赤血球の崩壊:脾臓で行う
・寿命:120日
※血球の寿命
赤血球:120日
血小板:10日
白血球:2~4日
🍎網赤血球
・赤血球から核が脱核した後に、細胞質に少量のRNAを残す
・超生体染色(ニューメチレン青)で染まる
・成熟赤血球より大きく、比重が軽い
網赤血球分離 (一過性の増加) | ①溶血性貧血(PNH、TTPなど) ②鉄欠乏性貧血、悪性貧血の治療開始後 ③急性大量出血後 |
減少 | ①再生不良性貧血 ②赤芽球勞 ③無効造血(巨赤芽球性貧血、MDS) ④急性白血病 ⑤脾腫 ⑥慢性腎不全、甲状腺機能低下症 |
🍎白血球
・核分裂できるのは骨髄球まで。後骨髄球からは成熟(核が細くなる)するのみ。
・各成熟細胞プールの割合
骨髄:末梢=1:1
末梢血の循環プール:辺縁プール=1:1
・辺縁プールは肺、骨髄、肝臓などの細い血管の内皮細胞にくっついている
⇒運動、ストレスなどの刺激でここから循環プールへ移行する
・骨髄から末梢血までの期間:1~2週間
末梢血での滞在時間:半日
組織にでた好中球の寿命:2~4日
特徴 | |
好中球 | アズール顆粒(一次顆粒)、二次顆粒(特殊顆粒) ズダン黒B(+)⇒ リン脂質、中性脂肪、糖脂質などが存在するから Drumstick(太鼓のばち):女性の不活性化X染色体 |
好塩基球 | 異染性(暗紫色) 顆粒は水溶性 ⇒ 顆粒が溶出して空胞のように見えることがある 顆粒にヒスタミンとヘパリンが含まれている Ⅰ型アレルギーに関与 |
好酸球 | 2分葉のものが多い 顆粒に主要好塩基性蛋白(MBP)を含む POX染色で強陽性 IgEに対する受容体あり |
🍎血小板
・核内有糸分裂
核分裂だけで、細胞分裂は起こらない!
・巨核球が成熟し、その細胞がちぎれたものが血小板
1つの巨核球から血小板が約2000~5000個産生される
・血小板を放出し終わった巨核球はマクロファージに貪食される。
<血小板について>
・直径:2~4μm
・核はない。細胞質にアズール顆粒。
・寿命:約10日
・機能:粘着、凝集、放出
・体内の血小板の1/3は脾臓にプールされている
<血小板顆粒>
▶濃染顆粒
ADP、ATP、セロトニン、Ca2+など
▶α顆粒
①凝固因子:フィブリノゲン、Ⅴ因子
②血小板固有蛋白:βトロンボグロブリン、血小板第4因子
③粘着性糖蛋白質:VWF、トロンボスポンジン(TSP)
④血小板由来成長因子(PDGF)
⑤アルブミン
▶リソソーム顆粒
関連記事
-
血液検査 ~凝固・線溶系の異常~
2023/8/16
🍎PT・APTTの凝固異常による疾患 PT正常異常APTT正常血小板異常 ⅩⅢ因子異常外因系凝固因子(Ⅶ)異常 ビタミンK欠乏 フィブリノゲン活性減少異常内因系凝固因子(Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ)異 ...
-
血液検査 ~凝固・線溶~
2023/8/16
凝固・線溶検査は苦手な方も多いと思います。まずはざっくり把握しましょう。 オススメ本 リンク 🍎凝固因子 主に肝臓で産生されます。 因子慣用名生成産物Ⅰフィブリノゲンフィブリントロンビンが作用するとフ ...
-
血液検査 ~血小板の異常~
2023/8/10
今回は血小板異常についてざっくり説明します。 オススメ本 リンク 🍎出血性素因 血小板減少 (≦10万)特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病(ITP)続発性血小板減少血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)溶 ...
-
血液検査 ~白血球系疾患~
2023/8/10
今回は白血球系疾患についてざっくり説明します。 オススメ本 リンク こちらも形態が詳しく記載されていてオススメです↓↓ リンク 🍎白血球・リンパ球形態異常 <顆粒球系> ▶中毒性顆粒 成熟が短縮してい ...
-
血液検査 ~溶血性貧血~
2023/8/10
今回は赤血球系疾患のなかの溶血性貧血について説明します。 リンク 🍎溶血性貧血とは 造血機能自体に障害はなく、赤血球の寿命が短縮し壊れやすく(溶血)なったことで起こる貧血の総称。 骨髄では貧血の状態を ...