今回は白血球系疾患についてざっくり説明します。
🍎白血球・リンパ球形態異常
<顆粒球系>
▶中毒性顆粒
成熟が短縮している。一次顆粒に由来。
炎症性疾患、G-CFS投与後
▶デーレ小体
楕円形~紡錘形の好塩基性斑点
リボソーム(RNA)が残存した像。
重症感染症、G-CFS投与後、
MDS、May-Hegglin異常
中毒性顆粒はMDS、May-Hegglin異常では認めない!
▶低顆粒性好中球
好中球の顆粒がほとんど染まらない。
白血病、MDS
▶過分葉好中球
好中球の核分葉>5分葉
巨赤芽球性貧血、G-CFS投与後、
MDS、尿毒症
▶輪状核球
ドーナツ状の核
CML、MDS、急性アルコール中毒
▶偽ペルゲル核異常
核の形がパンダの目、ダンベル様
MDS、白血病、感染症、
パクリタキセル投与後
▶チェディアック-東異常
巨大な顆粒が顆粒球・単球・リンパ球に認める。
好中球の走化性や殺菌能が低下している。
Chédiak-Higashi症候群(常染色体劣性遺伝)
<リンパ球>
▶異型リンパ球(反応性)
ウイルスなどの抗原刺激により活性化した反応性の変化
一過性に多彩な細胞の増生
細胞質の好塩基性が強い
ウイルス感染(EBV、CMV、ヘルペスウイルスなど)
トキソプラズマ、リケッチア感染
EBV(伝染性単核球症)はTリンパ球が異型になる!
▶異常リンパ球(腫瘍性)
核形態、細胞質の染色色調及び膜性状などに著しい異型性を認める
持続的に類似した細胞の増生
悪性リンパ腫(マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫など)
異型リンパ球と異常リンパ球はややこしいので鑑別点を覚えておきましょう。
▶花弁様細胞
花弁様、こぶ様に核分葉
成人T細胞性白血病(HTLV-1感染)
HTLV-1は、CD4+T細胞に感染
<形質細胞>
▶Russell小体
形質細胞の細胞質にみられる酸好酸性淡紅色に染まる丸い小体
多発性骨髄腫
🍎白血病
▶AMLのFAB分類
分類 | 特徴 | POD染色 | 非特異的 EST染色 | NaF | |
M0 | 骨髄芽球性白血病 (微分化型) | N/C比大 アズール顆粒(-) 難治性の白血病 | - | ||
M1 | 骨髄芽球性白血病 (未分化型) | 芽球が多い Auer小体を認めることもある ズダン黒B(+) | + | - | - |
M2 | 骨髄芽球性白血病 (分化型) | M1に比べて成熟傾向を示す細胞がしばしば認められる Auer小体を認めることもある t(8;21)AML1/MTG8(ETO) | + | - | - |
M3 | 前骨髄性白血病 | 芽球・前骨髄芽球様が多い 粗大な顆粒を多く認める Faggot小体(束状Auer小体) 核は大きな湾曲がある DICを発症しやすい t(15;17)PML/RARα ATRA療法 | ++ | ||
M4 | 骨髄単球性白血病 | 芽球っぽい、単球っぽい細胞が多い inv(16)-M4Eo | + | + | - |
M5a | 単球性白血病 | 芽球っぽいが、M0~M4より細胞質が広い ⇒ 単芽球 | - | + | - |
M5b | 単球性白血病 | やや若い単球(少し分葉しているくらい) 皮膚、歯肉、中枢神経などへの組織浸潤傾向が強い | ± | + | + |
M6 | 赤白血病 | 顆粒球系と赤芽球系の両系統の白血病細胞 Fe染色(+)青い顆粒 PAS染色(+) しばしば多核 | - | - | - |
M7 | 巨核芽球性白血病 | 芽球は全体的に大型で大小不同 偽足様突起 血小板POD(+) CD41(+) | - |
▶ALL:急性リンパ性白血病
・小児期に起こる癌で最も多い
・T細胞性ALL
・B細胞性ALL:胞体が広く濃青色に染まり、大きな空胞を多数有する
▶CML:慢性骨髄性白血病
・健康診断で発見されやすい
・好中球が著しく増加し、好塩基球や好酸球も増加
・t(9;22)BCR/ABL1
Ph(フィラデルフィア)染色体 ・・・ALLでも一部認められる
・NAP活性が著しく低下
鑑別となる類白血病反応では、
NAP活性は上昇、Ph染色体は陰性となります。
・治療:チロシンキナーゼ活性阻害薬(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ)
▶ATL:成人T細胞白血病
・HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)
・母乳中の感染リンパ球などの介してHTLV-1がヘルパーTリンパ球に感染する(垂直感染)
・地域性がある(西南地方に多い)
・ほとんどがキャリア(保菌者)
・花弁状細胞(フラワー細胞)と呼ばれるATLが出現する
・CD2、CD3、CD4、CD25(+)
CD8(-)
・sIL-2値が病態に応じて高くなる
▶ヘアリー細胞白血病
・毛髪細胞(毛髪様突起)
・B細胞の腫瘍でCLLに類似
・酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)陽性
🍎MDS:骨髄異形成症候群
・通常の治療に反応しない不応性貧血、無効造血による汎血球減少、多彩な血球の形態異常を特徴とする
・中高年層に多い
・約半数で染色体異常を認める(-5/5q-、-7、+8、+11など)
※MDSと類似疾患
<芽球比率によるMDS病型区分>
<形態学的異形成>
▶赤芽球系
▶骨髄球系
▶巨核球
🍎M蛋白血症
免疫グロブリンが単クローン性に増加している疾患
<多発性骨髄腫>
・形質細胞が腫瘍化し、単クローン性の免疫グロブリン増加、骨髄での造血抑制、骨破壊を起こす疾患
・正常免疫グロブリンの産生抑制 ⇒ 液性免疫能が低下
・二次性アミロイドーシスを起こして腎不全や心不全を併発することもある
▶検査所見
・末梢血:骨髄腫細胞の増加による汎血球減少
免疫グロブリン増加による赤血球連銭形成
ラッセル小体
・尿検査:B-J蛋白
・血液生化学:LD高値、高Ca血症、BUN高値、CRE高値
血清タンパク免疫電気泳動でM-bow
CD38、CD138(+)
・骨X線写真:骨打ち抜き像
<原発性マクログロブリン血症>
IgMを産生する細胞が腫瘍化
多発性骨髄腫の約5%程度で、50~70歳代に多い
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