今回は赤血球系疾患のなかの溶血性貧血について説明します。
🍎溶血性貧血とは
造血機能自体に障害はなく、赤血球の寿命が短縮し壊れやすく(溶血)なったことで起こる貧血の総称。
骨髄では貧血の状態を補正するために、造血が亢進する。
赤血球の成熟そのものに異常はないため、正球性正色素性貧血となる。
多くは血管外溶血。
①溶血による検査所見
・貧血、脾腫、黄疸
・間接Bil↑、LD↑、血清ハプトグロビン↓
②造血亢進を反映する検査所見
・網赤血球↑
・赤芽球過形成
🍎溶血性貧血の要因
①赤血球自体の異常(先天性)
・赤血球膜の異常(球状赤血球症など)
・赤血球酵素の欠乏(PK、G6PDなどの欠乏)
・Hbの合成異常(異常ヘモグロビン症、サラセミアなど)
・発作性夜間血色素尿症(PNH)
ただし、PNHだけ後天性なことに注意!!
②赤血球外の異常(後天性)
・免疫的要因
自己抗体(寒冷凝集素病、発作性寒冷Hb尿症(PCH)など)
不適合輸血
新生児溶血性貧血
・物理的要因
運動、熱傷、心臓弁膜障害、細血管症
細血管症:TTP、HUS、DIC
・化学的要因
・病原体(マラリアなど)
・その他(尿毒症など)
🍎発作性夜間血色素尿症(PNH)
・後天性(突然変異)
・幹細胞レベルの異常 ⇒ 汎血球減少
・赤血球の補体感受性が亢進
※正常であれば、補体溶血抑制蛋白(DAF、CD55)と補体膜攻撃阻害因子(CD59)などの補体制御因子により、溶血しないようにしているが、PNHでは、赤血球膜異常により、CD55、CD59などが結合しにくい。補体が活性化していまい、赤血球膜に孔をあけ、溶血する。
・睡眠時、体動少なく、呼吸のみとなるため、PaCO2↑(pH↓)し、補体が活性化
⇒ 血管内溶血が起こり、早朝に褐色尿を認める。
・尿細管へのヘモジデリン沈着 ⇒ 腎障害
・補体による血小板活性化や赤血球崩壊によりADH放出
⇒ 血小板凝集↑↑ ⇒ 静脈血栓
・Ham試験(酸性化血清溶血試験)+
※寝ているときの状態を再現している
・ショ糖溶血試験+
※イオン強度を至適範囲からずらし、補体を活性化させる
🍎自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
・赤血球に対する自己抗体が産生
⇒ 抗原抗体反応によって赤血球が傷害される
・血液中で自己抗体が赤血球膜に結合し、感作赤血球となる
⇒ 脾のマクロファージが抗体を感知して食べる
⇒ 血管外溶血+球状赤血球
・直接クームス試験+
エバンス症候群=AIHA+ITP
▶寒冷凝集素症:IgM型の冷式抗体
▶発作性寒冷Hb尿症(PCH):IgG型(Donath-Landsteiner試験)
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