臨床検査 輸血検査

輸血検査 ~交差適合試験/輸血関連~

今回は交差適合試験と、血液製剤や感染症など輸血関連のことを説明します。


🍎交差適合試験

・主試験(M):受血者血漿+3%供血者赤血球

・副試験(m):3%受血者赤血球+供血者血漿

・自己対照(AC):受血者血漿+3%受血者赤血球

<検査法>

・生食法:IgMを検出(ABO血液型不適合の検出)

・酵素処理法(ブロメリン法):37℃で反応し、輸血副作用を起こす不規則性免疫同種抗体(IgG)を検出

・間接抗グロブリン法:37℃で反応し、輸血副作用を起こす不規則性免疫同種抗体(IgG)を検出

⚠️交差適合試験でRh血液型の不適合はチェックできないため、必ず事前に確認すること!
(D抗原(-)の血漿中には抗D抗体は存在しないので反応しないため)

<生食法>

 受血者
ABOAB
A
B
O
AB

<結果の解釈>

主試験が陽性副試験が陽性自己対照が陽性
ABO不適合 
受血者血漿中の不規則抗体
連戦形成(S法)
④供血者血球が直接抗グロブリン試験陽性(C法)
⑤血液分画製剤やABO不適合の血小板製剤の輸注後で、受血者血漿中に抗A・抗B抗体が受動的に存在している場合
①ABO不適合
②受血者血球が汎血球凝集反応
③供血者血漿中の不規則抗体
④受血者血球が直接抗グロブリン試験陽性(C法)
S法:寒冷自己抗体、 連銭形成
B法:非特異反応
③C法:直接抗グロブリン試験陽性

酵素処理法、間接クームス法は不規則抗体検査のときと同じ手順で行います。
忘れた人は前回の記事をチェックしてください。

輸血検査 ~不規則抗体~

2023/8/10  

今回は輸血検査の続き、不規則抗体について説明するよABO血液型とRh以外にも多くの血液型が存在しており、臨床的意義のある抗体がないか調べることで輸血副作用を回避できます。輸血するまでの流れで最難関😢頑 ...

さて、ここからは輸血関連事項を説明します。

🍎輸血前後の感染症検査

 輸血前検査輸血後検査
HBVHBs抗原
HBs抗体
HBc抗体
輸血前の検査がすべて陰性の場合、輸血3ヵ月後にHBV NAT(核酸増幅検査)を実施
HCVHCV抗体
HCVコア抗原
輸血前の検査がすべて陰性の場合、または感染既往と判定された場合輸血1~3ヵ月後にHCVコア抗原検査を実施
HIVHIV抗体輸血前の検査が陰性の場合HIV抗体検査を実施

🍎輸血後副作用

 急性溶血性副作用遅発性溶血性副作用
発症時間輸血後24時間以内輸血後24時間以降
溶血部位血管内溶血が大部分血管外溶血が大部分
概要ABO不適合輸血が大部分を占める輸血前の抗体検査が陰性で二次免疫応答により増加したIgG同種抗体が原因となる
典型的な遅発性溶血性副作用は輸血後3~14日程度で溶血所見を認める。
機序 免疫学的・溶血反応:血管内溶血(ABO不適合、不規則抗体)
・非溶血性発熱反応
・アナフィラキシーショック、アレルギー
・輸血関連急性肺障害(TRALI)  
 ⇒ 輸血中または輸血後6時間以内に起こる非心原性の肺水腫を伴う呼吸困難
・血管外溶血(不規則抗体)
・血小板輸血不応
・輸血後紫斑病
・輸血後移植片対宿主病(PT-GVHD)  
 ⇒ 輸血血液中のドナーT-リンパ球が、受血者の体内で排出されず、
増殖し受血者の組織を攻撃することによる
非免疫学的・細菌汚染によるエンドトキシンショック
・輸血関連循環過負荷(TACO)  
 ⇒ 輸血に伴う循環負荷によって惹き起こされる呼吸困難を伴う心不全
・赤血球製剤中の機械的溶血(加温、凍結など)
・クエン酸中毒、高カリウム血症
・輸血手技によるもの(神経損傷、空気塞栓など)
・細菌による敗血症
・感染症
・ヘモジデローシス

🍎血液製剤・輸血製剤

赤血球製剤の有効期限が変更されたので要チェックです!

 目的貯蔵法有効期限
赤血球液(RBC)血中赤血球不足またはその機能廃絶に適する2~6℃採血後28日
※2023年3月に変更された
新鮮凍結血漿(FFP)血液凝固因子の補充~-20℃
融解:30~37℃低温槽
※融解後3時間以内に使用
採血後1年
濃厚血小板(PC)血小板減少症を伴う疾患20~24℃ 要振盪採血後4日
濃厚血小板HLA (PC-HLA)血小板減少症を伴う疾患で、 抗HLA抗体を有するために用いる。
人全血液(WB)一般の輸血適応症2~6℃採血後21日
合成血(BET)ABO式血液型不適合による新生児溶血性疾患2~6℃製造後24時間
血液凝固第Ⅷ因子製剤血液凝固因子を補充する
血友病Aの患者さんには血液中の血液凝固第Ⅷ因子が不足している
10℃以下 禁・凍結2年間
アルブミン製剤事故などで大けがをして、
大量の出血がありショック状態に陥ったときや、
熱傷(やけど)、肝臓病、腎臓病などの治療に使われる
室温 禁・凍結2年間
免疫グロブリン製剤人の血漿中の抗体(免疫グロブリン)を分離精製した製剤。
色々な病原体に対する抗体が含まれているので、
抗生物質などがなかなか効かない感染症に使用されます。
また、免疫グロブリンが不足している場合、
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、
川崎病にも使用される
10℃以下 禁・凍結2年間

最後に、近年主流になってきているT&Sについて説明します。

<Type & Screen (T&S)>

出血量が少なく、術中に輸血を行う可能性が低い場合に血液製剤を準備する方法。

・ABO血液型、Rh(D)の判定   →タイピング(typing)

・赤血球に対する不規則抗体の有無 →スクリーニング(screening)

以上を行い、Rh0(D)陽性で不規則抗体が陰性の場合 → 事前の交差適合試験を実施しない(省略する)

輸血が必要となった場合は、血液製剤のABO血液型がオモテ試験で同型であることを確認、

または、交差適合試験(主試験)を生理食塩液法で実施して適合血を輸血する

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